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自宅でピアノ教室を開業!?音の問題を抱えないためには防音工事が必須!

個人の方でも比較的開業しやすいと考えられるのが、ピアノなど、楽器教室の営業です。もちろん、ピアノ教室などを営業する場合には、人に教えられるだけの技術や知識が必要となりますが、ピアノが設置できるだけのスペースがあれば、自宅でも教室を始められるなど、他の業種と比較すれば開業のハードルはかなり低くなると思います。

実際に、長年ピアノを学んできた人の中には「プロのピアニストは無理だとしても、近所の子供に教えるぐらいならできるかも!」とピアノ教室の開業を検討する方は多く、自宅の一室を利用して子供向けの楽器教室を営業しているお宅を見かける機会はそれなりに多いです。特に、ピアノは小さなお子様の習い事の代表とも言え、情操教育の一環としてピアノ教室に通わせている親御さんは多いです。

ただし、これからピアノ教室の開業を検討している方が注意しておきたいのは、ピアノ教室は、ピアノを教えられるだけのスキルと、ピアノ本体があれば問題なく営業できるほど簡単なものではないということです。ピアノは、非常に美しい音色の楽器として有名ですが、時と場合を考えなければただの騒音に感じ取られてしまうことになります。特に現在では、戸建て住宅ごとの距離が近くなっている、マンションなどの集合住宅で暮らす方が増えているなど、人々の住環境が一昔前よりも近づいています。そのため、何の防音対策もなくピアノ教室を開業すると、ほぼ間違いなくご近所さんとの騒音トラブルを抱えることになるでしょう。
そこで当記事では、ピアノなどの楽器教室開業時に考えておきたい防音の基礎知識を解説します。

ピアノ教室開業前の検討ポイント

ピアノ教室の開業を考えている方であれば、何より「生徒さんはきちんと集まるのか?」ということが気になる事でしょう。商売として始めるわけですので、利益がきちんと出るのかが気になるのは当たり前ですが、実はこれ以外にもきちんと検討しておかなければならないポイントがあります。

自宅でピアノ教室を運営する場合、当然、授業のある日はピアノの音が鳴り響くことになりますよね。もちろん、音が生じる時間は、生徒さんがどれぐらいいるのかによっても変わりますが、商売としてやる限りは毎日生徒さんがやってきてピアノの練習が行えているのが理想です。なお、街中にあるピアノ教室というのは、プロのピアニストなどを対象するのではなく、小中学生を対象にするケースが多いので、ピアノの練習は平日の夕方から夜間にかけて、土日は日中と言った感じになるでしょう。

それでは、ピアノの演奏のための防音対策が何も施されていない状況で、毎日夕方から夜にかけてピアノの音が聞こえてくると、近隣の方はどのように感じるでしょうか?ピアノの音色は、確かに美しい音であることは間違いありませんが、聞きたいと思ってもいないのに、毎日のようにピアノの音が聞こえてしまうと、ほとんどの方は騒音と受け取ってしまうことでしょう。つまり、教室から漏れ出るピアノの音によって近隣トラブルに発展してしまう恐れがあるわけです。
こういったことから、自宅でピアノ教室を開業する場合には、以下のようなポイントをきちんと押さえておくようにしましょう。

騒音トラブル防止のため、防音対策が必須

自宅でピアノなどの楽器教室を開設しようと考えている方であれば、近隣住民に迷惑を掛けないように、防音対策が必要不可欠であると考えなければいけません。上述しているように、ピアノの音は、演奏者や教員からすれば美しい音色のように思えますが、普通に日常生活を送っている方からすれば、騒音に感じてしまう場合が多いです。例えば、コロナ問題以降はテレワークを導入する企業が増えていて、自宅で仕事をする方が多くなっています。そして、自宅で仕事をしている時に、近所の家から延々とピアノの音が聞こえてきた場合、「仕事に集中できなくなる!」と苦情の一つは言いたくなるものですよね。実は、ピアノの音というものは、皆さんが考えている以上に騒音トラブルの危険性があり、防音工事の存在が全国に広く知られたのは、ピアノの騒音トラブルが殺人事件にまで発展したのがきっかけです。

ピアノ教室の運営がスムーズに進み、生徒数が増えていけば、近隣には長時間にわたってピアノの音が響きわたる可能性が高くなります。さらに、ピアノ教室がマンションなどの集合住宅にある場合、他の家との生活空間が非常に近く、近隣住民は常にピアノの音に悩まされるといった危険もあるのです。

こういった騒音トラブルの可能性があることから、自宅でピアノ教室を開業しようと考えている場合、長時間ピアノの演奏を行ったとしても、近隣住民にその音で迷惑を掛けないような防音工事を行うのが事業主の責務だと考えましょう。

ピアノは高性能な防音室が必要

近隣との騒音トラブルを防ぐためには、防音対策が必要不可欠なのですが、それではどの程度の性能が必要になるのでしょうか?最近では、ホームセンターやインターネット通販で防音対策用のアイテムが手に入るようになっており、DIY好きの方の中には、自分で防音対策を施そうと考える方も多いです。ただ、ピアノなど、楽器教室が近隣に迷惑を掛けないレベルの防音工事になると、素人の方がDIYで対策を施すのでは不十分な場合がほとんどです。

防音工事業界では『D値』と呼ばれる数値で性能が表されるのですが、これは防音工事を行うことによって得られる遮音性能を示しています。遮音は文字通り「音を遮る」性能になるのですが、防音室内で発生した音が防音室の外に出る時、どの程度まで小さくなるのかを表すものと理解してください。例えば、ピアノ用防音室は、D-50~55程度の遮音性能が目安となるのですが、この性能だと、防音室内で100dBの音が生じたとしても、防音室の外では45~50dB程度の音まで小さくなっているという意味です。環境省によると、人が静かだと感じる音の大きさが45dB程度ですので、基本的にこのレベルまで音を小さくするのを目指します。

ピアノの音量は、プロのピアニストが演奏する場合、最大で110dBもの音量になると言われているのですが、子供が演奏する教室レベルであれば、90dB前後の音量を想定しておけば問題ないでしょう。したがって、D-50の遮音性能を実現すれば、防音室の外では環境騒音に音が紛れて目立たなくなります。これが、素人の方がDIYで対策を行い、D-30程度の性能しか出なかった場合、十分に騒音と感じられるレベルの音漏れが生じてしまい、コストをかけたのに苦情が来るといった最悪な結果を招く恐れがあります。

参照データ:環境省「騒音に係る環境基準について

ピアノ教室の防音室について

それでは最後に、ピアノ教室を開業する際、用意しなければならない防音室についても簡単に解説します。防音室と聞くと、我々のような防音工事業者に依頼してつくってもらうものというイメージが強いと思いますが、これ以外にも、ユニット型の防音室を設置するという方法があります。ここでは、ユニット型防音室とフルリフォームによる防音室、それぞれのポイントをご紹介します。

ユニット型防音室

ピアノ教室用の防音対策として、ご自身で簡易的な対策を施そうと考える方もいますが、立地条件などが相当整っていなければ、防音材の購入費を無駄にしてしまうだけなのでオススメできません。例えば、広い敷地で庭付きの一戸建て、隣家とも距離が離れているという場合は、防音カーテンやホームセンターなどで購入できる防音材などでも対処可能だと思いますが、都市部の戸建てやマンションなどの集合住宅の場合、これらの対策では音漏れを防止することは基本出来ません。

上述しているように、ピアノは100dB相当の大音量が出る楽器で、都市部の戸建て住宅やマンションなどでピアノ教室を開業する場合は「D-50~55」相当の遮音性能が必要です。そして、このレベルの遮音性能になると、素人の方がDIYで実現することは不可能です。DIYを趣味とする方が増えている現在、防音工事に関する情報を紹介したブログや動画などが増えていますが、これらの対策はあくまでも簡易的なもので、人の声や家電製品の音など、生活音レベルを軽減できる程度と考えてください。ピアノ用の防音として材料を集めた場合、確実に性能が不十分な対策となってしまいますので、無意味なことにお金をかけることになります。

なお、大手楽器メーカーが販売している本格的なユニット型防音室であれば、ピアノなどの楽器演奏にも十分に耐えられる性能をもっています。有名どころはヤマハさんの「セフィーネ」や、カワイさんの「ナサール」などで、これらのユニット型防音室は、リフォームで防音室を作るよりもコストが抑えられる、設置工事が短時間で済むといった点がメリットです。なお、ユニット型防音室は、部屋の中にプレハブ小屋を建てるといったイメージです。
ユニット型防音室の注意点は、天井が低く狭い空間となるので、どうしても窮屈に感じてしまい、長時間の演奏には適していないと言われています。もちろん、大型のユニット型防音室もありますが、その場合は、200万円を超えるような価格になるので、ここまでの費用をかけるならフルリフォームの方が確実にオススメと言えます。ユニット型防音室は、規格が決まった製品をその場で組み立てるという仕様ですので、音響環境などが気に入らなくても微調整することができません。楽器の上達は、自分の演奏を耳で確認しながら行うことが重要ですので、楽器教室の防音室としては悩ましい問題が続出する可能性があります。

ピアノ教室であれば防音室を作るのがオススメ

ピアノなど、楽器教室用の防音室であれば、近隣に迷惑を掛けない遮音性能、生徒が演奏しやすい空間づくり、最適な音響環境を実現するため、専門業者によるフルリフォームがオススメです。防音室を作るまでの防音工事となると、200万円以上のコストがかかることも珍しくなく、高額な費用で躊躇してしまう方が多いと思います。

しかし、教室を開けるようなユニット型防音室となると、かなり高額な費用がかかりますので、中途半端に費用をかけるのであれば、もう少し頑張って自分の理想とする教室を作るのがオススメです。ピアノどの楽器教室になると、長時間の練習も想定できますし、音漏れしないことはもちろん、生徒も先生も快適に過ごせる環境を作ることが、上達するためには非常に重要になります。

もちろん、フルリーフォームで防音室を作る場合、多額のコストがかかってしまう点は大きなデメリットですが、遮音性能はもちろん、室内の音響などに関しても要望通りに作ることができ、生徒さんが学ぶために最適な環境が作れるという点は大きなメリットになるでしょう。

まとめ

今回は、自宅でピアノなどの楽器教室の開業を検討している方に向け、近隣トラブルを防ぐために知っておきたい防音対策の基礎をご紹介しました。この記事でご紹介したように、ピアノは非常に大きな音が生じる楽器ですので、教室などを開いて長時間演奏することが想定できる場合、かなりの確率で苦情に発展すると考えなければいけません。

特に、都市部の戸建て住宅やマンションの一室などで教室を開業する場合、何らかの防音対策を行うのが事業者の責務だと考えられるでしょう。何らかの事業を起こす際には、さまざまな部分にコストがかかりますが、楽器教室の開業に関しては、防音に最もコストをかけておくことが長く続けるためにも重要になると思います。