ブログ

防音室は新築とリフォームならどちらのタイミングが最適?いくつかのポイントで比較してみます

自宅に防音室を設ける工事については、一般的に「音の問題を抱えた(抱えそう)な時、リフォームで行うもの」というイメージを持っている方が多いと思います。コロナ禍を経験した現在では、建売住宅の中にも「防音室付き」という点をアピールポイントにしている物件が増えていますが、音楽関係者以外の方であれば、防音室を用意しても使用するか分からない、どの程度の性能が必要なのかイメージできないなどと言った理由から、新築時に防音室工事にコストをかける決断ができないという方が少なくありません。

それでは、楽器の演奏やホームシアター、自宅でのカラオケ用防音室については、新築時に作っておくのとリフォーム工事を作る、どちらのタイミングが最適と考えられるのでしょうか?防音室を作るまでの工事となると、決して安くないコストがかかりますので、出来れば最適なタイミングで工事をお願いしたいと考える方が多い事でしょう。

そこでこの記事では、防音工事について、新築とリフォームで作る場合のそれぞれの利点をいくつかのポイントで比較してみたいと思います。

新築の場合、理想的な広さや天井高の防音室が実現

防音室工事について、新築とリフォームで実現する場合の一つ目の違いは、仕上がった防音室の広さが異なるというポイントです。

そもそも防音室と言うものは、壁や天井、床の防音性を高めなければならないので、どうしてもそれぞれの部位の厚みが増してしまい、部屋が全体的に狭くなってしまいます。防音室の使用目的によっては、広い空間が欲しい、ある程度の天井高は確保しておきたいといった要望を頂くことがあるのですが、リフォームで防音室を作る場合、どうしても要望通りの防音室が実現できないケースがあります。

以下に、新築で防音室を作る場合と、リフォームで防音室を実現する場合の、部屋の広さに関するポイントを解説しますので、参考にしてみてください。

リフォームの場合、部屋の狭さや天井高に制限ができる場合も

リフォームで防音室を作る場合、既存の部屋に対して防音工事を施すのが一般的です。そして、このケースでは、既存の壁や天井、床に防音工事を施すことになるので、「壁の厚みが増す」「天井や床が二重構造になる」と言った理由で、部屋の空間的な広さがどうしても狭くなってしまいます。

一般的な住宅の居室については、2m30cm~2m40cm程度の天井高が確保されています。ただ、ピアノ室やドラム室のように振動音の対策まで必要な防音室の場合、二重天井・二重床を実現するために、15~30cmほど天井高が低くなります。さらに、壁については、既存の壁を一度解体し、壁内に遮音材や吸音材を充填することで必要な性能を発揮させます。つまり、四方の壁がリフォームする前よりも厚みを増しますので、部屋そのものの広さがどうしても狭くなってしまいます。一般的に、楽器用など、高性能な防音室を実現したい場合には、元の部屋よりも1畳程度は狭くなると想定してください。防音工事業者のHPを確認してみると「6畳の部屋を防音室に作り替える場合、5畳の防音室に仕上がる」と解説されているのよく見かけますね。

一方、新築時に防音室を作っておくことを考えてみましょう。新築時に防音室を用意する場合、家の設計段階から自分の要望を反映してもらうことができますので、天井高も部屋の広さも希望通りに作ることが可能です。もちろん、敷地面積の限界がありますし、他の部屋とのバランスなども考えなければいけませんので、いくらでも広い防音室が作れるわけではありません。しかし、高性能な防音室を必要とするお客様の場合、防音室を中心に設計することで、お客様が希望する天井高、部屋の広さを確保することが可能です。ちなみに、このメリットについては、『注文住宅』の場合と考えてください。新築でも、建売住宅を購入する場合は、リフォームと同じ扱いになります。

このように、新築時に防音工事を行うことは、リフォームと比較すると「広い防音空間を実現できる」というメリットが得られます。

防音室の利便性に違いが生じるケースがある

このポイントは、ほとんどの方が見落としているのですが、防音室は、新築時に作る、リフォームで実現するといったタイミングの違いにより、利便性に差が生じてしまうケースがあります。上述しているように、防音室は普通の部屋と比較すると、天井高が低くなる、壁が分厚くなるといった理由から部屋が狭くなります。楽器用の高性能な防音室になると、一畳以上も狭くなるケースがありますし、部屋としての使い勝手は想像以上に変わってしまうことでしょう。

以下に、このポイントについて皆さんにおさえておいてほしい注意点をご紹介します。

防音工事のタイミングで変わる防音室の利便性について

リフォームで防音室を作る場合、最も重視しなければならないのが「お客様が希望する防音性能を実現する」ということです。楽器防音室レベルになると、壁や天井、床の防音工事を行うのに合わせて、既存の室内ドアを防音ドアに交換するといった対策が行われます。
防音工事において、既存ドアを防音ドアに交換する工事は、「引き戸⇒開き戸」と言った感じに、ドアの構造ごと変えなければならない時以外は、ドアの位置など、部屋の構造そのものに手を加えるようなことはしません。そのため、もともとの部屋の構造で、出入口が角に設けられている場合、壁の厚みが増すことなどを要因にドアの可動域が少なくなってしまう…などと言った問題が生じることがあります。当然、ドアの可動域が少なくなれば、出入りがしにくくなってしまいますし、最悪の場合、楽器の買い替え時に何度もドアの工事をしなければならないなんてことになります。なお、リフォームの場合でも、防音室の構造に合わせて、ドアの位置を変更することは可能です。ただこの場合、防音工事にかかる費用が割増しになってしまいます。

一方、新築時に防音室を作ることを考えると、自分の希望通りの防音性能を実現できるだけでなく、最も使いやすい防音室にすることが可能です。リフォーム時に考えられる、ドアの可動域の問題などが生じるようなことはありませんし、その他の使い勝手に関する問題なども生じないでしょう。さらに、防音室の設置場所を家の設計段階で決めることができますので、最も都合の良い導線になるようにする、音の問題が最も生じにくくなるような位置を選ぶなど、防音室の利便性を最大化させることも可能です。

こういったことから、新築で防音室を作る場合、防音室の性能面だけでなく、利便性なども最大限配慮することができる点がメリットでしょう。

リフォームの場合、インターネット環境に問題が生じるかも

防音室の利便性に関連しますが、インターネット環境が重要な時代ですので、独立したポイントとしてご紹介します。防音室の使用目的が、動画配信やスタジオ利用などと言った場合、防音室内でのインターネット環境が非常に重要になります。ただ、本来、防音室というものは高い防音性能を実現するため、重い素材で構成されることになります。そして、そのような部屋の構成が原因となり、携帯電話の電波やWi-Fiの電波環境が悪くなってしまうのです。

こういったことから、防音室内で快適なネット環境が必要というケースでは、有線LANを防音室内まで引き込む工事が行われます。つまり、配線の引き込み工事が関係するわけですので、新築とリフォームなど、防音工事の施工タイミングでさまざまな違いが生じてしまいます。

リフォームで防音室を作る場合、ネット環境が悪くなるかも

上述の通り、高性能な防音室を作る場合、壁に重量のある素材がふんだんに使われることから、携帯やWi-Fiの電波環境が悪くなるケースがあります。そのため、動画配信やスタジオ利用を目的とした防音室を作る場合には、防音室内での快適なネット環境を実現するため、防音室内までLANケーブルを引き回す工事も行います。ただし、リフォームの場合、どうしても施工条件が付いて回ることになりますし、中には防音室内へのLANケーブルの引き込みが難しい住宅もあるのです。このようなケースでは、防音室内でのネットはWi-Fiの電波を増幅する機器などで対応してもらうことになるのですが、それでも快適とは言えないネット環境になるケースがあります。

一方、新築時に防音室を作る場合、インターネット環境などについても何の心配もいりません。設計の段階で、「防音室でも快適なネット環境が必要です」と伝えておけば、防音室内にLANを引き込むための設備を事前に整えてもらうことが可能です。この他にも、コンセントの位置や機材の位置などもある程度決めておくことで、配線が露出しないスタイリッシュな室内環境を実現することも可能です。

Youtubeなどでの動画配信を目的として防音室を作る場合、快適なインターネット環境が必要不可欠ですので、防音工事の計画段階できちんと防音室の利用目的を伝えておきましょう。防音室完成後に、「Wi-Fiがつながらないから配線工事がしたい」などと、手直しする場合は、余計なコストがかかってしまいます。

防音室の換気性能について

最後は、防音室の換気性能についてです。音は、人の目では確認できないようなほんの小さな隙間からも伝わってしまいます。防音室というのは、こういった小さな隙間まで、きちんと塞ぐことによって音漏れやノイズの侵入を防いでいます。つまり、防音室は、通常の居室と比較した場合、気密性が非常に高くなるという特性があるわけです。

近年の新築業界では、高気密・高断熱がキーワードになっていますが、住宅の気密性をどんどん高めてしまったことで、シックハウス症候群を発症する人が増えたという欠点があります。シックハウス症候群の詳細は省きますが、家の高気密化が進んだ対策として、24時間換気システムの設置が法で義務付けられています。気密性が高いと、室内の空気が新鮮な空気と入れ替わらなくなるので、人の健康に悪影響をおよぼすとされているからこういった対策がとられたわけです。
防音室は、高気密化が進んでいると言われている一般住宅の居室と比較しても、はるかに高い気密性を持っています。つまり、防音室は適切な機械換気を行っていかなければ、空気の入れ替えが非常に難しい部屋になります。適切な換気が行われない場合、部屋の中に嫌な臭いが残ったり、湿気がこもることでカビやダニが繁殖し、最悪の場合、人の健康被害に発展する恐れがあります。また、部屋の広さによっては、防音室内の酸素濃度が低下して酸欠症状が出る人までいるそうです。こういったことから、高性能な防音室には換気機能を設置する必要があるのですが、新築とリフォームでは、注意点が変わってしまいます。

> 厚生労働省「シックハウス対策のページ

リフォームでは、換気が難しい場合がある

防音室に換気システムを導入する場合、新築であれば設計段階から防音室を考えられるので、建物外から新鮮な空気が取り込めるような換気システムの構築が可能です。最近では、換気口部分の防音性が考慮された換気システムが登場していますので、適切な換気が行われていても、音の問題を生じさせる心配もありません。

ただ、リフォームで防音室を実現する場合、新築のように自由に換気システムを構築することができない場合があります。防音室に長く滞在するため、新鮮な外気を取り入れられるような換気システムにしたくても、外壁に穴をあけて換気口を取り付けるなど、既存建物の構造に関わる部分に触れる工事が難しいケースも少なくありません。分譲マンションなどの一室を防音室にするなどと言った場合、換気のためとはいえ、外壁に穴をあけることは基本的に認めてもらえないでしょう。
こういったことから、リフォームで防音室を作る時には、建物の中(隣の居室や廊下など)で空気を循環させるような換気システムを組むのが一般的です。なお、防音室に取り付けた換気口のせいで、家の中に音が回るなどと言った心配はありません。しかし、防音室内に新鮮な空気を取り込みにくくなるのは間違いありませんので、新築の方が自由度が高いと言えるでしょう。

まとめ

今回は、自宅に防音室を作る場合でも、新築時に防音室を作っておく場合と、既存住宅にてリフォームで防音室を実現する場合、それぞれの違いをご紹介しました。なお、この記事でご紹介した内容から見ると、防音室は新築時に作っておく方が良いと感じた人が多いと思います。この部分に関しては、楽器の演奏を生業にしている、動画配信をしているなど、「絶対に防音室が必要」だという方であれば、新築時に防音室を計画するのが正解だと考えられます。

ただ、「将来的に子供にピアノを習わせるかも…」など、防音室の必要性が明確でない場合は、必要になった時にリフォームで作るのがオススメかもしれません。というのも、防音室は、決して安い物ではありませんので、新築時に防音室を計画する場合、家の建築コストが数百万円単位で高くなってしまいます。それなのに、お子様が楽器に興味を示さなければ、防音室に使ったコストが無駄になってしまいます。さらに、新築時に防音室を作るとなると、間取りの面でも防音室を中心として計画が進みます。そのため、本来望んでいた間取りが実現できないなどと言ったケースも考えられますので、防音室が必要な明確な理由が無い限り、デメリットが想像以上に多いです。

阪神防音では、多くのハウスメーカー様から防音室のご依頼を頂いているなど、新築工事に並行して防音工事を行うことも可能です。もちろん、既存住宅での防音室リフォームも得意としていますので、防音室に関する小さな疑問でもお気軽にお問い合わせください。