ブログ

防音室にはエアコンの取り付けが必要?防音工事の前におさえておくべきエアコンの重要性について

近年では、さまざまな利用用途を考えて「部屋を防音室にしたい!」と考える方が増えているようです。防音室と言えば、自宅でピアノやドラムなど楽器の練習が必要なプロの演奏家の方が特別に用意するもので、そういった仕事をしているわけではない人にとっては縁遠いものだと考えている方が多いです。しかし、コロナ問題以降は、人々の在宅時間が長くなっている、家と家の距離が近くなっているなどと言ったことを理由に、自宅に防音室を作りたいと考えている方はかなり多くなっているようです。実際に、阪神防音が施工する防音室工事でも、楽器用防音室以外の利用用途のお客様が増えています。

それでは、これから実際に自宅に防音室を作ろうと考え、専門業者に防音室工事を依頼しようと考えている方は、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか?防音室を作る目的は、「自分が出す音で隣人に迷惑をかけない」と言った配慮の面が強いですし、多くの方は防音室の性能にばかり着目します。当然と言えば当然のことなのですが、実は防音性能にばかり注目し「防音室内の快適性」を無視したことで、防音工事に失敗したと後悔するケースが非常に多くなっているようです。これは、防音工事の需要の高まりを受け、業界に新規参入する業者が増加していて、業者の知識不足から完成した防音室に問題が生じているのが大きな要因です。

特に、防音室へのエアコンの取り付けについて後悔するケースが多いようですので、当コラムでは、皆さんがおさえておきたい防音室へのエアコンの取り付けに関する基礎知識を解説します。

部屋を防音室にする!エアコンの必要性とは?

それではまず、防音室へのエアコンの取り付けについて、その必要性を考えていきましょう。エアコンは、寒い冬場は暖房に、気温の高い夏は冷房として働いてくれる設備で、人が快適に過ごしていくためには必須の家電製品となっています。実際に、猛暑化が進んでいる日本の夏は、エアコンをつけないことで家の中でも熱中症の危険があると言われていて、ほとんどの住宅に標準装備されるようになっています。住宅によっては、全ての部屋に1台ずつエアコンを設置しているなんてケースも珍しくありませんし、防音室にも可能であれば取り付けしたいと考える人がほとんどでしょう。

ただ、エアコンの構造を考えてみると、少し心配になる面もあるのです。例えば、エアコンを冷蔵や暖房として稼働させるためには、風を吹き出すための室内機と熱を吐き出すための室外機が必要とされます。そして、このエアコンの室内機と室外機は、熱のやりとりをするためにホースでつながっており、2つの部品があることから一つのエアコンとして動作するという構造になっているのです。そして室内機と室外機は、その名称から分かるように、屋内に設置する物と屋外に設置する物に分かれていて、これらを一つの機器として動作させるために、部屋に穴をあけてホースを通さなければいけないわけです。

つまり、防音室にエアコンの取り付けを行いたいと考えた場合、高い防音性能を持っている防音壁に、音の逃げ道となる可能性がある『穴』をあけることになるため、「防音性が悪くなってしまうのではないか…」という不安が頭をよぎる方が多いです。さらに、防音室にエアコンを設置する場合、エアコンの本体価格と取り付け工事費が必要になりますので、エアコンがない防音室と比較すると、防音室工事にかかる費用が高くなってしまいます。こういったことから、防音室を作るためのコストが高くなるのに、「性能が落ちる穴をあけるなんて本末転倒だ!」と考え、防音室にはエアコンが必要ないと判断する方も少なくありません。

それでは、この考えは正しいのでしょうか?防音性能や防音工事にかかるコストを考えると、まっとうな意見のように感じますよね。

防音室にはエアコンが必須

答えから言ってしまいますが、「防音室にエアコンは不要!」という考えは大きな間違いです。確かに、部屋に穴をあける必要がないため、防音室の将来的な性能低下の不安は少なくなるかもしれませんが、防音室としての使い勝手や快適性が致命的に落ちるという問題が発生するからです。

高性能な防音室は、部屋の中にもう一つ部屋を作り、浮き構造にするといった対策を施されます。そしてその際には、壁や天井、床などに吸音材として働くグラスウールなどの多孔質素材が採用されるのです。実は、防音工事で使用される吸音材は、住宅用建材では「断熱材」として使用されるアイテムです。そして、この断熱材を、高い防音性能を発揮させるため、通常よりも分厚く施工するケースが多いです。さらに、音は空気を振動させて拡散するものですので、音漏れや侵入を防ぐためには、空気の流れを遮ってあげる必要があります。防音のことを話す際に、「ほんの小さな隙間が弱点になる」と言われるのは、隙間が生じると空気が出入りしや少なるため、その分音も伝わりやすくなるからです。したがって、高性能な防音室を作る際には、部屋に生じる隙間を可能な限り塞ぐという対策が施されます。壁の中に充填される吸音材も、隙間が生じないように丁寧に施工されるのです。

こういった対策が施されることから、防音室というのは、通常の居室と比較しても、圧倒的に高気密・高断熱な環境が出来上がります。高気密・高断熱の空間は、外気温の影響を受けにくくなるだけでなく、室内で発生した熱も外に逃げなくなるという特徴があることから、防音室は冬場でも室温がどんどん高くなってしまいます。つまり、防音室の利用用途が、楽器の練習やカラオケ、ホームシアターなど、防音室内に長時間滞在することが想定される場合、自分の体温や機械が発生させる熱により室温がどんどん高くなってしまい、エアコンが無ければとても快適とは言えない状況にまでなってしまうのです。
さらに、真夏の暑い日に防音室を利用する場合、そもそもの気温が高くなるため、エアコンを設置していない防音室内は、とても人が過ごせない、すぐに熱中症になってしまうような環境になる危険まであります。この他にも、狭い防音室の場合、その気密性の高さから、長時間防音室内に滞在した人が、酸欠になってしまう危険性まで生じると言われています。

こういったことから、長時間の利用が想定される防音室を作る場合、室内で快適に作業をするためにも、エアコンの設置が必要不可欠になるのです。

防音工事前のエアコンに関する準備について

ここまでの解説で、防音室にはエアコンの設置が必要だということが理解していただけたと思います。ここからは、これから自宅に防音室を作ろうと考えている方に向け、防音工事の前に確認しておきたいチェックポイントを解説します。

防音室用のエアコンを準備しておく(取り付けは防音工事業者に依頼する)

防音室にエアコンの取り付けを考えている場合、防音工事の施工が始まる前にエアコン本体を用意しておくのがおすすめです。もちろん、防音室が完成した後に、必要に応じてエアコンを購入し、後付けすることも可能なのですが、この場合、二度手間になることからエアコンの取り付けにかかるコストが高くなるほか、防音室の性能に問題が生じてしまう可能性が高いのです。

防音工事に入る前に、エアコンを用意しておけば、エアコンの取り付けそのものを防音工事業者に依頼することが可能です。最初の打ち合わせの段階で、エアコンを設置してほしいと依頼しておけば、何の問題もなくエアコンを設置してくれますし、防音工事費用の中にエアコンの取り付け費が含まれるため、コストも抑えられます。防音工事業者は、ホームシアターやカラオケシステムなど、電気設備の施工まで行えるのが一般的なので、エアコンの取り付けができないという業者は少ないです。
さらに、防音室が完成した後に、エアコン取付業者に別途エアコンの設置を依頼した場合、エアコン業者の施工が原因となり、防音室の性能が低下してしまう恐れがあるのです。これは、エアコンを設置するために防音壁に穴をあけるのですが、エアコン設置業者は防音の知識がないため、穴を埋める際に防音性のことまで考慮できないからです。防音室工事と同時にエアコンの取り付けを行えば、エアコンの配管穴から音漏れしないようにきちんと防音対策を施してくれます。したがって、高い防音環境を維持したまま、防音室にエアコンの取り付けを行いたい場合、事前にエアコンを用意して、取り付けも一緒に行ってもらうのが安心なのです。

なお、防音工事の打ち合わせ時に「エアコンは必要ない」と決定したものの、後からエアコンの取り付けを行いたいとなった場合、取り付けが難しくなるケースがあるので注意しましょう。特に、ユニット型防音室の場合、既製品に穴をあけるのが難しい、さらにユニット型防音室自体が電源や壁のエアコン穴を塞いでしまうことで、エアコンの配管ができない…なんてことになるケースがあるのです。上でもご紹介したように、防音室は高気密・高断熱な環境を作り出すため、長時間の利用が想定される場合は、エアコンが必須です。したがって、防音工事の打ち合わせの段階で、エアコンの取り付けまで行ってくれるのかを確認しましょう。

防音室の実現方法によってはエアコンの設置ができない

二つ目の注意点は、防音室の種類によっては、エアコンを取り付けしたくてもできないという問題があることです。防音室は、利用用途によって必要な広さが変わります。一般的に専門業者による防音工事で実現する防音室の場合は、仕上がりが5畳前後になるよう6畳程度の部屋に防音工事を施します。ただ、防音室の利用目的が、声楽や管楽器の練習などの場合、1畳前後の防音室でも練習が可能です。防音室にかかるコストは、当然面積が狭くなれば節約できますので、立って演奏が可能な楽器の練習を目的とする場合、0.8~1.2畳程度のユニット型防音室の購入を決断する方も多いです。

ただ、防音室へのエアコンの設置は、最低でも1.5畳程度のスペースが必要で、これより小さな防音室の場合、ポータブルエアコンなどを持ち込むしかないでしょう。1.5畳の防音室の場合でも、エアコンの設置は可能ですが、エアコンからの風を直接受けてしまうことになるため、不快感があると思います。

こういったことから、自宅に防音室を用意したいと考えている方で、エアコンの設置が希望という方は、防音室の実現方法についてもしっかりと検討しておくべきです。狭い防音室を購入し、ポータブルエアコンなどを設置する方法の場合、防音室の利便性が著しく下がりますので、長時間の利用は難しくなるでしょう。また、少し広めのユニット型防音室になれば、100万円以上のコストがかかりますし、その場合は、もう少し頑張ってオーダーメイド防音室を作るのがおすすめです。防音工事による防音室は、細部までお客様の要望をお伺いしたうえで、一から設計しますので、性能はもちろん、快適性も高いはずです。

エアコン用の電源を作る

防音室にエアコンを取り付ける場合、エアコンの電源を用意しなければいけません。エアコンは、その他の家電製品と比較しても、一度に消費する電力量が多い為、専用の電源を用意することが推奨されています。エアコンの専用回路を用意せず、他の家電とタコ足配線などを行った時には、同時に家電を使用した際にブレーカーが落ちてしまう…、タコ足部分から発火して火災に発展する恐れがあるなど、さまざまな問題が生じます。

何度も言っていますが、快適な防音室にしたいのであれば、エアコンの設置は必須ですので、防音室の設計を行う時に、エアコンの電源についても考慮してもらうのがおすすめです。つまり、一番最初の打ち合わせの段階で「エアコンの取り付けもお願いしたいので、専用回路を用意してください。」と伝えるべきです。

室外機の設置スペースを考えておく

もともとエアコンが設置されていた部屋を防音室にする場合、大きな問題にはなりませんが、防音工事に伴って新たに一台エアコンが増えるという場合は、室外機の設置スペースのことも考えておかなければいけません。「戸建てならどこにでも置けるでしょ」と考えるかもしれませんが、近年の戸建て住宅は、狭小地に3階建て住宅を建設するケースが増えているため、エアコンの室外機の設置場所に困るケースが意外に多いのです。また、マンションなどの集合住宅であれば、ベランダに設置することになりますので、スペース的な問題が必ず発生することでしょう。

防音工事に伴い、エアコンの取り付けをしたいものの、どうしても専有面積的に設置が難しい…という場合、管理会社や近隣の方に相談する必要性が生じるかもしれないと考えておきましょう。実際に、ベランダに設置できず、管理会社の許可をもらい、廊下に室外機を設置したという事例が過去にあります。

まとめ

今回は、防音室の意外な落とし穴となってしまうエアコンの取り扱いについて解説しました。防音室は、自宅で大きな音を生じさせる可能性がある方がコストをかけて作るものですので、ほとんどの方は防音室の性能にばかり着目してしまいます。もちろん、近隣の方に自分が生じさせる音で迷惑をかけないように…という配慮で防音工事を行う訳ですし、「音漏れが絶対にないようにしたい」という気持ちが先行してしまうのは致し方ないことです。

しかし、防音室は、室内で過ごす時間が意外に長くなるケースが多い為、部屋の快適性を無視するのはあまりおすすめではありません。というのも、防音室は、通常の居室とは比較にならないほど高気密・高断熱の環境になりますので、狭い防音室の場合は自分の体温などで室温がすぐに上がって不快に感じるようになる可能性があるのです。また、空気がこもりますので、換気のためにも空調設備の設置が望ましいです。

ただ、エアコンは、壁に穴をあけて室内機と室外機を繋ぐという機器的な特徴から、防音室にとっては弱点になってしまう恐れがあります。したがって、エアコンを取り付けても、そこから音漏れがないようにきちんと対策を取ってくれる、防音工事業者にエアコンの取り付けもお願いしましょう。記事内では、防音工事の前におさえておきたいいくつかのポイントもご紹介していますので、ぜひ押さえておきましょう。

カテゴリー: タグ: ,
この記事を書いた人

WEB 担当

阪神防音のホームページの管理をしております。 よりわかりやすくお伝えするよう心がけておりますが、もっとこうして欲しいなどご意見ございましたらお問い合わせフォームよりダメ出ししていただけると喜びます^^